北海道五大民謡のひとつである「鱈釣り(たらつり)節」は、昭和33年に古平(ふるびら)でうまれました。
タラ漁に出た漁師たちが船の上で唄われる唄で、古平の漁師・大島豊吉氏と田村栄蔵氏がつくったそうです。ベースとなったのは函館東部につたわる「たらつり口説節(くどきぶし)」だといわれています。
古平では「たらつり節」は日本海の海の幸“たら”にちなんだ町の誇りとして、いまや「たらつり節全国大会」が開かれるようになり、全国各地から多くののど自慢が集まっています。また開催に合わせて誕生した「みたら、やったら、くったらフェスティバル」とあいまって観光客を呼び込んでいます。
オエヤーサーエー
(ハァキタコラサッサ)
上でいうなら 神威の岬よ
次に美国に 丸山岬
下でいうなら オタモイ様よ
登り一丁に 降りも一丁
(ハァキタコラサッサ)
ハァー都合あわせて 二丁の山よ
おりとおりとに 参詣をいたし
参詣いたした その折柄に
おさごまいては 柏手たたく
(ハァキタコラサッサ)
わしの願いを 叶うたならば
(ハァキタコラサッサ)
オエヤーサーエー
さあさ船頭さんに 支度はよいか
めしをたべたら 帆を巻き上げて
今朝の嵐に せみ元詰めて
表若い衆に りょうふを頼む
ハァー洞の間若い衆に 帆足を頼む
ともの船頭さんに かじ前頼む
かじをだまして きりきりねじる
指して行くのは 雄冬の沖よ
とろりとろりと 厚苫前通れば
歌詞にある『オタモイ様』とはオタモイという地名にあるお地蔵様のことのようです。小樽市近郊のオタモイ海岸には古くからオタモイ地蔵と呼ばれるお地蔵様が祭られています。
『おさご』とは散米と書き、神仏や墓所に詣でたときや、お祓いを行うときにまき散らすお米のことです。船の安全を願って米と塩を混ぜて海にまいたりもします。
『わしの願いを 叶うたならば』歌詞としては妙な落ちがあり違和感が残りますが、もしかしたら『わしの願いを 叶うたならば』のあとに『~したい』など次の歌詞があったのかな、などと想像を膨らませられます。
『二丁の山』これは丁ではなく、町であろうと思われます。民謡では字の違いがよくあります。一町が10反とすれば、ひとつの町がはいる大きさです。上(かみ)の方向にカムイ岬、さらに下って美国、丸山岬、さらに下る(しもに)オタモイ様の地蔵ってところでしょうか。峠をこえるのは難所であったのだろうなどと、歌詞からいろいろ想像するのが民謡の面白さかもしれません。